配偶者「短期」居住権について③当事者間の法律関係 港北区の司法書士のブログ
2020/07/06
配偶者「短期」居住権における配偶者と居住建物所有者間の法律関係について、以下、配偶者居住権の場合と比較しながら、箇条書きにて示していきます。
⑴ 居住建物の使用
配偶者「短期」居住権については、居住建物の使用権限のみを認め、収益権限はない。したがって、被相続人の生前に被相続人が居住建物から収益を受けていた場合、その収益については、相続分にしたがって、共同相続人に帰属することになる(配偶者居住権の場合は、使用及び収益権限あり。)。
また、居住建物取得者は、配偶者に建物を使用するのに適した状態にする義務(修繕義務)までは負っておらず、配偶者が無償で居住建物を使用することを受忍する義務を負っているに過ぎない(配偶者居住権の場合は、修繕義務あり。)。
⑵ 用法遵守義務・善管注意義務
配偶者は、用法遵守義務及び善管注意義務を負い、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物を使用しなければならない(この点、配偶者居住権と変わらない。)。
⑶ 禁止事項
配偶者は、居住建物所有者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない(民法第1038条2項)。また、無断で増改築することもできない(用法遵守義務)。さらに、配偶者は、配偶者「短期」居住権を譲渡することができない(これらの点につき、配偶者居住権と変わらない。)。
⑷ 居住建物の修繕及び費用負担
居住建物の修繕が必要な場合は、まず配偶者において修繕することができ、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしない場合は、居住建物の所有者がその修繕をすることができる(民法第1033条1項及び第1041条)。
配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する(民法第1034条1項及び第1041条)(これらの点につき、配偶者居住権と変わらない。)。
⑸ 居住建物の所有者による配偶者居住権の消滅請求
配偶者が用法遵守義務・善管注意義務に違反した場合、あるいは居住建物の所有者の承諾を得ずに、居住建物を第三者に使用収益させたり、増改築した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をしたにもかかわらず、配偶者がこれに応じない場合には、居住建物の所有者は、配偶者に対する意思表示によって、配偶者居住権を消滅させることができる(民法第1038条3項)(これらの点につき、配偶者居住権と変わらない。)。
⑹ 損害賠償請求及び費用償還請求権の期間制限
用法遵守義務・善管注意義務違反によって生じた損害の賠償請求及び居住建物についての費用償還請求は、居住建物の所有者が建物の返還を受けたときから1年以内にしなければならない(民法第1036条及び1041条。)(この点、配偶者居住権と変わらない。)