配偶者居住権について②対抗要件 港北区の司法書士のブログ
2020/04/20
前回は、配偶者居住権の制度趣旨や成立要件などについてお話しましたが、今回は配偶者居住権の第三者に対する対抗要件についてご説明いたします。
配偶者が配偶者居住権を第三者に対抗するためには、配偶者居住権の設定登記を備える必要があります。
すなわち、配偶者居住権を取得した配偶者は、配偶者居住権の登記を備えていないと、その後居住建物の所有者から居住建物の所有権を譲り受けた者、あるいは居住建物の所有権を差し押さえた債権者(いわゆる配偶者及び所有者以外の第三者)に対して、配偶者居住権に基づき建物を使用収益している旨主張することができず、ひいては居住建物を明け渡さなければならない事態に陥いるおそれがあります。配偶者居住権を取得したにもかかわらず、第三者の存在によりその権利が失われることがないように、直ちに配偶者居住権の設定の登記を備える必要があります。
この配偶者居住権の登記は、不動産所在地を管轄する法務局に対して、配偶者と所有者で共同で申請することになります(居住建物の所有者は配偶者居住権を取得した配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います、民法第1031条)。このように居住建物の所有者には登記に協力する義務がありますが、にもかかわらず登記に協力しない場合は、所有者を相手方として裁判所へ登記に協力するよう求める訴え(登記義務の履行請求訴訟)を提起し、勝訴確定判決をもって、配偶者のみで登記申請をすることになります。
なお、配偶者居住権の設定登記の登記事項(登記申請書に記載し、不動産登記簿に記録される事項)及び登録免許税(登記申請に際に国に納める税金)は以下のとおりです。
⑴登記事項(不動産登記法第81条の2)
不動産登記法第59条に定める事項(登記の目的、登記原因及び権利者・義務者の氏名住所等)のほか
・存続期間 ※「存続期間 配偶者の死亡時まで」「存続期間 令和●年●月●日から令和■年■月■日まで又は配偶者
の死亡時までのうち、いずれか短い期間」など
・第三者に居住建物の使用又は収益をさせることを許す旨の定めがあるときは、その定め
⑵登録免許税(登録免許税法第9条及び別表第一)
建物の固定資産評価証明書に記載された評価額 × 2/1000
※例えば建物の評価額が1000万円である場合は、2万円が登録免許税
今回は配偶者居住権の対抗要件のお話しでしたが、前述のとおり、配偶者居住権を取得しても、登記を備えるまでは万全とは言えませんので、配偶者居住権を取得したら直ちに登記することが必須と言えます。